大切なものは

第 21 話


ルルーシュは電話をしていた。相手はビスマルク。二人の会話は耳を疑うようなもので、スザクの瞳は徐々に鋭く細められていった。

『その点は心配ありません。ル・・・ジュリアス・キングスレイはナイトオブゼロとして正式に登録されています。覚えておられないかもしれませんが、一度お渡しましたが、必要なものはこちらで用意しろと返されて・・・今時間がありますので届けに伺います』
「ああ、すまない」

ルルーシュが電話を切った。言いたいことはたくさんあるがビスマルクがここに来るなら、直接話しをすればいい。今はルルーシュだ。

「そんなこと、許されない!」
「お前が決めることじゃない。皇帝だけではなくナイトオブワンでさえ認めている」

小馬鹿にする用に笑いながらルルーシュが言った。

「それがどういうことか、わかっていないだけだ」
「わかっていて、やっているんだ。どのみち皇宮内の通信網は全て監視されている。問題があればすぐに通報されるだろう」

その通りだ。
通販一つとっても全て監視されている。
だが、それとこれとは話が別。

「ダメだ、絶対に」

ルルーシュに説得は意味がない。わかっているが。
その時、来客を知らせるベルが鳴った。

「失礼します」

室内に入ったビスマルクは、ルルーシュに騎士の礼を取った。
ルルーシュは確かに皇子だ。だが皇位は剥奪されている。何より、ユフィを殺した大罪にんだ。そのルルーシュに頭を下げるなんて。

「こちらになります」

ルルーシュが受け取ったもの。
それはジュリアスの通帳やカード類だ。ナイト・オブ・ラウンズである以上給料が振り込まれる。ゼロであるルルーシュが、資金を自由にできるということだ。

「ですが、ルルーシュ様」
「わかっている。俺が使う金はすべて監視されのだろう?」
「はい。そして通信関係も」
「この携帯を含め全て。監視カメラや盗聴器があることも全て理解している」

何も言わずとも自分が置かれた状況を全てを把握し理解している。
流石だなと言いたげなビスマルクに、ルルーシュは質問をした。

「ところで、届いた荷物はすべて検品されると考えていいのか?」
「はい」

これはルルーシュだからではない。危険なものを宮殿内に持ち込む訳にはいかないからだ。本人はその気がなくても、テロリストが細工をし、爆弾を仕込む可能性は十分にありえる。

「食料もか?」
「そうですが、なにか?」
「・・・ビスマルク、私の腕と目を奪ったのは、スザクか?」

突然の質問に、ビスマルクは驚き目を見開いた。
スザクも何を!?と驚きルルーシュを見る。

「違う、僕は!」
「お前の証言は信用できない」

冷たく返され、スザクは辛そうに顔を歪めた。
それは、信頼されていないことに対するものか、嘘ばかりのお前がそれを言うのかという怒りか。それは本人にもわからないものだった。

「申し訳ありません。現在調査中です」
「調査中?皇帝の指示ではなかったと?」
「陛下も知らなかったことでございます」

それをそのまま信じるわけではないが、もし真実だった場合、スザクが実行犯で、それを皇帝が忘れさせたわけではなかったということだ。

「まるで母さんの時のようだな」

どこか呆れたようなルルーシュの発言に、ビスマルクは息を呑んだ。
マリアンヌ襲撃の犯人はわかっていない。
そしてルルーシュの手と目に関してもだ。

「誰かのギアスか?まあいい。わかっているのは、俺の命を狙うものがいるということだ。母さんを銃殺し、ナナリーの足を撃ち歩く自由を奪った。そして今度は俺か。どうやら俺たちを直接傷つけることを好む相手のようだが、今後は手を変える可能性はある」

内部犯なのだから、検品する物に紛れて何かを仕掛けることは可能だろう。
飲食物なら毒を混ぜる可能性も十分考えられる。
外のテロリストより、よほど危険な相手だ。
・・・スザクのように正面から仕掛けてくれる相手ならどれほど楽だろう。

「ルルーシュ様への届け物と知られないようにする必要があります」
「買うものに関してはな。だが、普段の食事に混ぜられれば、犯人はスザクにされて終わる。違うか?」
「僕に?」
「ちょうどいいスケープゴートだろう。ついでにイレブンを排除できる」

これが他のラウンズなら抑止力になっただろうが、スザクはダメだ。
反対に、二人まとめて消すという手を使われるだけ。

「では、どうすれば・・・」

困惑したビスマルクを見るルルーシュの口元が弧を描いたように見えた。

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